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渦流探傷試験の測定原理

測定原理

測定原理の画像

渦電流探傷試験は、コイルに電流を流したときの磁場により金属内部に発生した渦電流が、きず等により乱れることを利用して、きずを検知する試験方法です。
コイルに交流電流を流し、測定物(導体)に近づけると、測定物には渦電流が発生します。割れ(クラック)等のきずが存在すると、渦電流は表面きずを避けて生成されるため、きずの有無により渦電流の流れる状況に変化が生じます。渦流探傷試験では、この渦電流の変化を検出しきずの有無を判定します。
ここでは、渦流探傷試験の測定原理を説明します。

渦電流の発生ときずの検出

渦電流探傷試験では、測定物に流れる渦電流が割れ等のきずによって影響を受けて変化することを利用し、きずの有無を判定します。その為、測定したい個所に渦電流を発生させ、更に、その渦電流の変化を検出する必要があります。

コイルに交流電流を流すと磁束が生成されます。この磁束が導体(測定物)に近づくと、導体内には起電力が生じて渦電流と呼ばれる同心円状の誘導電流が発生します。この電流は、導体内のコイルに近い表面ほど多く、コイルから離れた導体の内部では指数関数的に減少します。

渦電流発生イラスト画像

コイルに電流を流し、測定物(導体)に近づけると、
測定物には渦電流が発生する

渦電流発生イラスト画像2

表面だけでなく内部にも渦電流が発生するが、
コイルから離れるにつれ指数関数的に減少する

導体内を流れる渦電流により磁束が発生します。この磁束はコイルによって生成されている磁束を打ち消す向きに発生します。そして、この磁束を受けているコイルには起電力が生じます。
導体内を流れている渦電流は、割れ等のきずが有る部分では流れを妨げられきずを避けて流れるため、きずの有無により渦電流の流れる状況に変化が生じます。

渦電流の流れる状況に変化があると、渦電流によって発生している磁束にも変化が生じます。その結果コイルの起電力にも変化が生じます。この変化を信号処理することにより、渦電流探傷試験の結果を得ることができます。

渦電流ときずの関係イラスト画像

渦電流は割れ等のきずが有る部分では流れを妨げられ避けて流れる

渦電流ときずの向き

渦電流の向きときずの向きが同じ場合、渦電流には乱れが生じないため検出が困難です。反対に、きずに対して直角方向に渦電流が流れる場合、渦電流は大きく乱れるため検出感度が良くなります。このため、検出したいきずの向きに応じて、コイルの形式や形状、コイルの走査方法を検討する必要があります。

渦電流の流れときずの向きが同じ

渦電流の流れときずの向きが同じイラスト画像

渦電流の流れている方向ときずの方向が
平行に近いと検出感度が得られない

渦流探傷器のモニター
渦流探傷器のモニターのきず信号が小さい画像
きず信号:小さい

渦電流の流れに対しきずの向きが垂直

渦電流の流れに対しきずの向きが垂直イラスト画像

渦電流の流れている方向ときずの方向が
直角に近いほど検出感度は高くなる

渦流探傷器のモニター
渦流探傷器のモニターのきず信号が大きい画像
きず信号:大きい

きず以外の渦流探傷試験への影響

渦流探傷試験は、渦電流が割れ等のきずにより変化することを利用しきずの有無を判定しますが、きず以外にも渦電流に影響を与える要素が複数あります。適切な渦流探傷試験の実施にはそれら理解が必須です。ここでは、きず以外の渦流探傷試験に影響を与える要因について説明します。

項目 説明
測定対象の形状 測定箇所の形状変化は、導体内に発生した渦電流の変化の原因となります。この変化が、きずによる渦電流の変化よりも大きいと、きずの検出が困難となる場合があります。特に、配管や棒材・板材の端部は、渦電流の変化が非常に大きいため検査が困難です。
同じ形状位置での比較や、コイルの工夫、渦流探傷器の測定条件の調整により軽減できる場合もあります。
コイルと測定対象の位置関係 導体内の渦電流は、コイルに近いほど多く流れます。また、コイルと導体の距離変化で渦電流の量も変化します。従って、コイルと導体はなるべく接近させその距離を一定に保つことが、高感度・高精度の探傷試験に於いて重要です。
検査対象の導電率と透磁率

渦流探傷試験は、磁気を用いて誘導電流を発生させるので、導体とその付近における磁気や電流を乱す要因から影響を受けます。きず以外の磁気や渦電流を乱す要因を抑え一定に保つ事が、高感度・高精度の探傷試験では重要です。
導電率や透磁率が大きいと渦電流が導体内部に入り辛くなります。試験体と同じ材料で製作した対比試験片を用いて、必要とするきず深さが得られるように探傷周波数を調整する必要があります。
また、鉄などの透磁率にムラがある材料では、渦流信号がランダムに変化して信号にノイズが乗るため、探傷試験が難しくなります。

コイルの形状 測定箇所に生成される渦電流の分布は、コイルの巻き数、形状、大きさにより決定されます。一般的に大きなコイルは、小さいきずの検出には向きません。また渦電流の向きときずの向きが同じ場合、渦電流には乱れが生じないため、検出が困難です。
コイルの大きさは、導体内に発生させる渦電流の大きさに関与します。大きなコイルで広い範囲に多くの渦電流を流すと、小さなきずによる小さな渦電流の変化が見え辛くなります。きずの大きさを鑑みて、適正な大きさのコイルを用いる必要があります。
周波数 周波数は、導体内に発生させた渦電流の深さ分布に影響を与え、深さの異なるきずに対する感度状況に関係します。他にも、コイルと渦流探傷装置間のマッチングに関与する為、感度やノイズにも関係します。
試験周波数は、導体の素材や形状、検出したいきずやその範囲をもとに検討します。ただ、コイルの大きさや形状には制限があり、感度設定にも限界が有ります。このため、実際は任意の適切な大きさのコイルの設計周波数を元として、対比試験片で信号やノイズを確認しながら試験周波数を決定します。
試験速度
(コイルと検査対象の相対速度)
渦流探傷試験では浸透探傷のような応答時間を待つ必要がなく、超音波のように信号間の時間を測定する必要もないため、相対速度1m/1秒程度の比較的高速な探傷試験が行えます。ただし、あまり高速になると導体内の渦電流生成とその検出に影響が出る恐れがあるため、あらかじめ対比試験片を用いて信号の状況を確認しておく必要があります。