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渦流探傷試験の測定原理

検査の手順

実際の検査において実施する必要のある事前設定と、日常的な検査前と検査中の確認について説明します。事前設定では、特に自動検査において重要な役割を果たすフィルターについて詳細に説明します。

検査の手順の画像

事前設定

対比試験片を用いて必要な信号が得られるように渦流探傷器を設定し、その設定を保存します。主な設定項目として渦流探傷器のパラメーターである「周波数」「感度」「フィルター」「アラーム」の他、「プローブと検査品との間隔」等があります。

自動検査において、フィルターは非常に重要な役割を果たします。例えば、検査品を回転させながら探傷する場合、回転の偏心によりプローブと検査品の間隔(ギャップ)が検査中に変動する場合があります。偏心を無くすことが望ましいですが、部品の交差や回転機構の精度からある程度の偏心は避けられず、ギャップの変動によりノイズ信号が表示されます。偏心の程度によっては、ノイズ信号がきず信号と同レベルで表示され、きず信号と区別することができなくなる場合もあります。このような場合にフィルターを設定することで、偏心による信号を減衰させることができます。

フィルターの効果

ハイパスフィルター 設定前

設定前フィルターの効果(位相平面表示)の画像

設定前フィルターの効果(オシロスコープ表示)の画像

きずの信号と機械系の偏心によるノイズ信号が重なっており、きず信号だけにアラームを働かせることができない。

ハイパスフィルター 設定後

設定後フィルターの効果(位相平面表示)の画像

設定後フィルターの効果(オシロスコープ表示)の画像

ハイパスフィルターを適切に設定することで、機械系の偏心によるノイズ信号を減衰させ、きず信号のみを取り出すことができる。

主な設定項目 説明
プローブと検査品との間隔
(ギャップ)
プローブは検査品に近づけた方が、後の信号処理で有利となります。検査中にプローブと検査品のギャップが変動するとノイズ信号となるため、ギャップができるだけ変動しないよう注意してください。
周波数 各プローブの設計仕様に従うか、あらかじめ行った対比試験片の実験結果のS/N(信号雑音比)を見て決定します。渦流の浸透深さも鑑みるが、極端な設定は感度の低下やノイズの増加を招く恐れがあります。
感度 対比試験片を用いて基準感度を定めます。実検査感度は、この基準感度に±αの設定を行います。想定される一番大きな信号が画面内に収まるように調整します。
フィルター 実検査におけるノイズ信号レベルが、なるべく小さくなるように設定します。設定値によって信号の状況が変化するため、画面で信号の動きを確認しながら、感度やアラームの設定も見直す必要があります。
アラームの大きさと位置 信号のS/N(信号雑音比)を見ながら、ノイズを避けてきずを確実に検出できるよう、アラームの大きさと位置を設定します。

検査前の確認

始業時や休憩後などの検査開始前に、対比試験片を用いて定められた信号が得られることを確認・記録します。検査の条件が正しく設定されていることを確認すると共に、検査のシーケンスが正しく機能して、合格/不合格の判定が確実に行われることを確認します。

検査中の確認

実機の検査中、随時・定期的に、対比試験片を用いて、定められた信号が得られることを確認・記録します。
機器やプローブなどの環境の温度変化や、プローブと検査品とのギャップの変化で判定条件が変わることがあります。検査中定期的に、検査品の中に対比試験片を混ぜて流すことにより、対比試験片から期待する信号が得られ、検査が適切に行われていることを確認することが望ましいです。

検査品のロットが変わったり、機器の更新があった場合は、対比試験片を用いて仕様通りに動作することを確認し、必要に応じて再調整します。